前記事からの続きになるが、なぜ鮨 一幸の技術に対して疑いの目を向けるかというとTV番組情熱大陸からはその修行の過程や勉強の様子を感じるとることが出来なかったからに過ぎない。鮨職人は一通りの日本料理を手掛けられる技量を持つと言われる。前記事での日本料理の板前の自宅は料理専門書と季節の瀬戸、漆器で大変なことになっているというし、京都金沢での修行時代の話を耳にしたから「技術」というもののバックボーンを知ることができたからだ。その部分の共通性を情熱大陸からは得られなかった。ちなみに冒頭の失礼な発言というのは「この店に来るのが一番いい時節はいつか」というもの。つまりは「同じ価格で美味しいものにあたるのはいつか」という意味。心ある方であれば非常にさもしいことを口にしていることをご理解いただけるだろう。板前は戸惑いつつも真面目に応えていた。非常に優しい男だと思う。サボイキャベツの煮込みアンチョビとケッパーソース十勝池田阿部農場黒豚屋豚ロースソテー焼きしいたけを添えてマデイラワイン ドリヴェイラ ヴィンテージ1971 ブラッスリーセルクルのきむらまどかは「今日のお勧めはなんですか?」という店を尊重しているふりをして実は試している、あるいは責任を負わせているそして自分の食べたいものがない、知らない主体性のない客の問いに対して「メニューに載っているもの全部です」と答えるという。「召し上がりたいものをお選びください」仮にきむらが「失礼な発言」を言われたとしたら、「そんな店ならやっていません!」とブチ切れるだろう。「シェフが亡くなって大変ですね」と言われても「一人でも二人でも大変は変わりません!」とやっぱりブチ切れるだろう。「同情されてもしょーがないもの。むしろ迷惑」つまり飲食店として継続していくつもりなら「(営業上のあらゆることに)言い訳はできないし、しない」というきむらまどかの矜持があらわれている。「すくなくとも価格なりかそれ以上の満足感を得てもらえる皿を自信を持っていつも提供」するのがセルクルの存在価値であり信用であるときむらは心得ているだろう。ノブ・ハヤシシェフを偲ぶ会 メニュー きむらまどか直筆(笑い)。スケッチブックはノブハヤシが使っていたもの。偲ぶ会 料理の一部。ここから何種類もきむらまどかセレクションが。偲ぶ会のテーマが「スヌーピーに会いに来て」。客を迎えるこの大きなスヌーピーは亡きハヤシシェフが自ら買ったものという。偲ぶ会参加者に配られたメッセージとタオル。もったいなくて使えない。きむらまどかが全てを手掛ける「真」セルクルがスタートしてから1年以上が経過した。すでにノブ・ハヤシとセットでセルクルを展開した期間よりも長いということ。このことの意味を考えてみたい。シェフはいないが基本的にセルクルは何も変わっていない。食材の仕入れもきむらは今でも市場で行って自分の目で確かめて仕入れている。旬の野菜や魚介使用を標榜する店は多いが大部分が業者に届けさせたものを使用している。自分で選んでいない、あるいは選べないのが実態。ちなみにシェフがいた頃(2012.1.10)のメニューが紹介されている。『セルクルってどんなメニューがあるのかな。』/っという事でフードのスタンダードメニュー一挙公開っ。ここで本日のスペシャリティを含め約70種類と紹介されているが現在ではほとんど変わらないだけの種類が提供されている。もちろん内容は異なる。たとえば牛肉メニューは現在まったくない。しかし、人気であったあなごスモークも自家製生ハムも提供を再開している。近時では牛骨からひいたコンソメスープも始めた。牛ほほ肉の煮込みの提供が愉しみだ。しかしきむらはノブハヤシ料理の再現を必ずしも目指しているわけではないし、それは無理だ。それはきむらが一番わかっているだろう。ノブハヤシ料理ファンであった客層の一部は既にセルクルに見切りをつけ、顔を出さなくなったようだ。ノブハヤシのいないセルクルが辛すぎるという側面もあるのだろうが、一番辛いのは誰あろう当然ながらきむらまどかである。「真」セルクルになって以降、新規のリピーターが着実に増えていることをどう評価すべきなのだろうか。調理の技量でノブハヤシに劣るはずのきむらなのに。もとよりセルクルのコンセプトは素材の味わいを重視し、シンプルな調理で料理を安価に提供するという部分にあった。きむらは着実にそれを実践している。その姿勢と味わいが新規の顧客を納得させリピートさせているのだろう。 2012年菊鹿せせらぎ 札幌で提供したのはセルクルだけでしょう。これが入手できるのもハヤシシェフ繋がり。釧路産日帰り生サンマのオーブン焼き冷たいトマトソース中札内岡本農園産長ねぎのポタージュ(冷)糖度8度クリスタルなトマトの冷たいスープと高知産トマトのじんわりロースト北海道産きのこのポタージュ静岡産芽キャベツとアイコトマトと自家製ハムの煮込み十勝池田阿部農場黒豚生ハム1十勝池田阿部農場黒豚生ハム2いわしのロースト低温殺菌牛乳のミルク・シャーベット。この滑らかな舌触りと上質な甘さが醸しだす味わいは下手なアイスクリームを凌駕する。十勝池田阿部農場黒豚生ハム3十勝池田阿部農場黒豚生ハム4とある日篤志家の方が気前よくポンポン開けてくださった銘醸ワイン。気持ちよくご相伴に与りました。きむらオーナー曰く「とんでもないボトル」蛇足の一文。フレンチの有能なシェフであれば、かなり美味いラーメンスープを作り出す技術があるそうな。ノブハヤシもまかないで絶品ラーメンを作ることがあったそうだ。商売とすればそちらのほうが儲かるかも知れない。でもなぜそれをやらないか。「同じことスルの飽きるからじゃない。パスタも玉子料理も嫌がっていたもの。ツマラナイから」と。そのうち、きむらまどかはなにかやり始めるかもしれない。そんな予感がする。
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